普遍的なものは後から来る ドゥルーズのフーコー論 -合毅科技

普遍的なものは後から来る ドゥルーズのフーコー論

ドゥルーズは、フーコーが普遍的なものや永遠なものにあまり重要性を与えなかったことに注目している。現代社会に生きている欧米人にとっては、人権とか資本主義といった概念は普遍的でかつ永遠なものとして無条件に受け入れられるが、実は条件づけられた概念なのだというのがフーコーの考えである。どんな知も条件付けられている。その条件付けは歴史的な背景を持っている。つまりどんな知も一定の歴史的な環境を前提としているのであって、その環境が異なれば、知の体系もおのずから異なる。だから歴史を超越した普遍とか永遠なるものはない。ある時代に生きている人間が、自分らの知の体系を普遍的で永遠なものとして受け取るのは、その知の体系の中にからめとられているからだ、というのがフーコーの基本的な考えである。だから、普遍的なものが知を基礎づけるのではなく、ある時代に支配的な知が己を普遍的と名付けるのである。そのことをドゥルーズ=フーコーは「普遍的なものは後から来る」と言っている。

ある時代に普遍的な知の体系として成立しているものをフーコーは「エピステーメー」と呼んでいた。ドィルーズはどういうわけかこの言葉を使わず、地層とか歴史形成という言葉を使う。エピステーメーという言葉は、あまりにも精神的なニュアンスが強すぎて、社会の在り方をトータルに捉えるには不都合と考えたからであろう。フーコーは、特定の時代には特定のエピステーメーが成立すると考えた。フーコーが考えたエピステーメーは、とりあえずは、17~18世紀における古典主義的エピステーメーと19世紀以降の近代的エピステーメーの二つだ。この二つのエピステーメーの間には深刻な断絶がある。その断絶がどのように生じたかについて、フーコーは詳しい説明をしていない。その説明不足をドゥルーズが補う。ドゥルーズは、フーコーのエピステーメーに相当する地層とか歴史形成というものの生成は、突然変異によって起こるというのである。なぜそうなるのかというと、歴史形成は知の体系を構成する要素の組み合わせからなるが、その組み合わせは突然変異することがあるからだと言うのである。つまりエピステーメーとか歴史形成といったものは、突然変異を通じて変動すると言うのである。

フーコーは、今日我々が無条件に前提している「人間」の概念は、実は歴史的形成物だと言う。今日的な人間概念が成立したのは、近代になってからである。それ以前にも当然人間という言葉はあったが、今日的な意味での人間を意味していたわけではなかった。それは例えば狂人の概念において確かめることができる。狂人は、今日では治療すべき存在だが、近代以前の社会においてはそうではなかった。例えば古典主義の時代には、狂人はならずものどもと一緒に施設に隔離すべき存在だった。それ以前の社会では、狂人は愛すべき存在として一般人とともに生きることが許容されていた。時代の変化にともなって、狂人の概念も変化したのである。狂人の例は特殊なのではない。人間という概念の変化の一つの例にすぎないのである。

ともあれ、人間という概念は歴史的なものである。それは特定の時代と結びついている。ある時代の始まりに密接にリンクしているのである。ということは、ある時代が終われば、それに対応している人間概念も終わりを告げるということだ。そういう意味でフーコーは「人間は死んだ」と言ったのだが、あまりにもショッキングな言い方だったので、大方の拒絶にあった。現在生きている人間は、特定の社会システムと強くリンクしている。それゆえそのシステムが根本から変化すれば、人間の概念も変化せざるを得ない。フーコー自身は、今日の社会システムがどんな変化を見せるかについては語っていない。ドゥルーズにも明確なイメージあるわけではない。ただ、今の社会を構成している要素のいくつかが陳腐化し、それにかわって全く別の要素が入ってくれば、システム全体に突然変異が起こるだろうと考えているだけである。その点ドゥルーズはマルクスのような社会変革者ではない。社会変革者ではなく、哲学者である。哲学者の仕事は社会を変えることではなく、社会を解釈することである。

普遍性という言葉に戻れば、いまほど普遍的とか永遠とかいう言葉が安易に使われている時代はない。その使われ方はかなりご都合主義的である。たとえば人権という言葉は、考えられる限りもっとも普遍的な価値を表すといながら、一方では事実上人権侵害がまかり通っている。イスラエル国家のパレスチナ人への暴力はその典型例だ。イスラエル国家が植民地主義的な暴力国家であることは、例えば日本では周知のことである。だが、世界の大国の指導者はそうは見ない。イスラエル国家がパレスチナ人に対して振るっている暴力は、テロとの戦いだと言って合理化してしまう。かつて植民地主義が横行していた頃には、植民地の住民の抵抗はやはりテロだとされて、弾圧されるのが当たり前だった。テロとの戦いであって、人権の侵害ではない。なぜならテロリストは人間ではなく、獣だからというわけである。イスラエルのユダヤ人指導者は、自分らは獣を退治しているのだから、人権侵害云々はあたらないと平気な顔で言うのである。

そういう状況を見せられると、普遍的な概念だといわれる人権も色あせて見える。そうなる理由は、人権という概念がご都合主義的に使われているからである。その背景には、人間という概念がやはりご都合主義的に使われているということがある。フーコー=ドゥルーズによれば、主体としての人間という概念は、ギリシャ人がはじめて取り上げ、以来ヨーロッパはその人間概念を多かれ少なかれ受け継いできた。ギリシャにおける人間概念は、仲間という概念と強く結びついていたので、仲間ではない生き物、例えば奴隷には適用されなかった。奴隷は獣とかわりはなく、したがって人間として扱われないのである。同じようにして、パレスチナ人はイスラエル国家によって人間としては扱われず、他の欧米諸国もそれを黙認している。だから今の世界には、普遍的な概念としての人間など存在しないも同然なのである。地球上で生きるすべての人間が人間としての尊厳を保てるようになるには、人間という概念が根本的に変わらねばならない。だが人間という概念だけ変化するということは、ドゥルーズらにとってはありえない。エピステーメーとか歴史形成とかれらが呼んでいるシステムが全体として変化しなければ、人間という概念がそれこそ人間性にふさわしいものへと変化することはないであろう。





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